円キャリートレードって何? 円安を利用して儲けて、円高になったら日本のせい?
いきなり円高!なんで?
って思うじゃないですか。
そうじゃなくても、ここ数年、
「なんでこんなに円安なの?」
とも思っていました。
もちろん円安にはいろいろな理由がありますが、大きな理由の一つが日本とアメリカなど海外との金利差です。
日本は長いこと超低金利。一方、アメリカでは日本よりずっと高い金利がついていました。
だったら、金利の安い円でお金を調達して、それをドルに替えて、もっと利回りの高いところで運用すればいいんじゃない?

……と考える人が出てくるわけです。
しかも、みんなが円を売ってドルを買えば、それ自体が円安方向への力になります。
そして円安が続けば、円を借りている側にとってはさらに都合がいい。
これが今回知って、
「へー、そういうこともやってたんですか」
と思った話です。
最近、金融の仕組みをいろいろ知りまして
ETFや個別株を細々と少額持つ、ということは、実は10数年前からやっておりました。
とはいえ、私の資産がそれによって華々しく成長したということも特になく(笑)、金融の知識もそれほどありません。
ニュースに知らない用語が出てきても、
「なんだろう?」
と思いつつ、そのままスルー。
そんな感じでした。
ところが近年のS&P 500やIT株のものすごい上昇。
この先大丈夫なのか?というニュースもちらほら見かけるようになり、また株のことが気になり始めました。
そこで、分からないことをその都度チャッピーさんに解説してもらっているのですが、
「へー、そんな仕組みになってたの?」
と思うことが結構ある。
なので、聞きかじりながら勉強したことを、少しずつ書いていこうと思います。
聞きかじったことその1
世界の投資家は、日本円を使って投資しているらしい
これ、どうも本当らしい。
日本は長年、ものすごく金利が低かったので、世界の投資家にとって円は「安く資金調達できる通貨」になりました。
低金利の円で資金を調達する。
それをドルなどに替える。
そして米国債や株など、より高いリターンを期待できる資産に投資する。
これが、いわゆる円キャリートレード(yen carry trade)です。
しかも最近始まった話ではありません。
円キャリートレードは少なくとも1990年代にはすでに行われていて、日本が1999年にゼロ金利政策を導入して以降、円は長年、世界の金融市場で低金利の「調達通貨」として使われてきました。
ちなみに、「日本銀行から世界の投資家が直接お金を借りている」という意味ではありません。
銀行からの円建て融資のほか、FXスワップや先物などを使って、実質的に「円を借りている」のと似たポジションを作る方法もあります。むしろヘッジファンドなどでは、こうしたデリバティブを使う方法も一般的だそうです。
いやー、いろいろ考えますね。
聞きかじったことその2
レバレッジって何?
これも金融ニュースでしょっちゅう出てくる言葉です。
簡単に言ってしまえば、
自分が持っているお金より大きなお金を動かす仕組み。
たとえば自分のお金が100万円ある。
普通なら100万円分の株を買います。
ところが借り入れなどを使って500万円分の投資をすれば、5倍のレバレッジ。
株が10%上がっただけでも、500万円なら50万円増える。
元手100万円から考えれば、ものすごい利益です。
上がっているときはウハウハです。
博打ですね。
しかし当然、逆もあります。
500万円分の株が10%下がれば、50万円の損。
自分のお金は100万円しかなかったのに、その半分が飛んでしまいます。
さらに価格が下がり、担保が足りなくなれば、
「追加でお金を入れてください」
というマージンコールが来たり、ポジションを強制的に処分しなければならなくなったりします。
そこで株を売る。
株価がさらに下がる。
すると別のレバレッジ投資家も苦しくなって売る。
売る → 下がる → また誰かが売る。
こういう連鎖が起きることがあります。
BIS(国際決済銀行)も、2024年8月の市場混乱では、レバレッジを使った取引の解消とマージン上昇が値動きを増幅したと分析しています。
そして円キャリーにもレバレッジ
ここで、この二つの話がつながります。
低金利の円で資金調達する。
その資金で海外の資産を買う。
さらにレバレッジも使う。
円安で、株も上がっている間はいいんです。
ところが、日銀が金利を上げ始める。
円が上がり始める。
すると、それまで円を安く調達していた人たちにとって状況が逆転します。
円を返すには円を買い戻さなければならない。
そこで、
海外資産を売る
↓
円を買い戻す
↓
さらに円高になる
↓
別の円キャリー投資家も苦しくなる
↓
また資産を売る
という巻き戻しが起こる可能性があります。
2024年8月には、まさにこれが実際に起こりました。
BISは当時の円キャリー取引について、正確な規模の把握は難しいとしながらも、ざっくりした中間的な推計として約40兆円(当時約2,500億ドル)という数字を示しています。しかも、データに表れない取引があるため、過小評価の可能性もあるとしています。
2024年8月、日本株がドカーン
2024年8月5日。
日経平均はなんと1日で12.4%下落しました。
1987年のブラックマンデー以来の大幅な下落でした。
もちろん原因は円キャリーだけではありません。
直前にはアメリカの弱い雇用統計が出て景気後退への懸念が強まり、もともと割高感のあった株式市場に売りが出ていました。
そこへ円高と円キャリーの巻き戻し、レバレッジ解消が重なった。
その結果、日本ではTOPIXも約12%下落。
一方、同日のS&P 500は約3%、Euro Stoxxは約1.7%の下落でした。
つまり世界中が影響を受けたものの、
一番派手にやられたのは日本でした。
しかも市場はその後かなり早く回復し、その週の金曜日までにはS&P 500は月曜日の下落分を取り戻し、TOPIXも大部分を回復しました。
それで「日銀が世界市場を混乱させた」?
ここで私はちょっと引っかかります。
日本が長年低金利だった。
その低金利を利用して、世界の投資家が円を安く調達した。
そのお金で海外の資産を買った。
さらにレバレッジをかけた取引まで膨らんだ。
そして日銀が、長く続いた超低金利を少しずつ正常化しようとする。
円が上がる。
キャリートレードが巻き戻る。
世界の市場が揺れる。
すると、
「日銀の利上げが世界市場を混乱させた」
という話になる。
いや、ちょっと待ってください。
そもそも日本の低金利を、世界の投機資金の調達手段として利用したのは誰なんでしょう。
日銀が、
「どうぞ安い円を借りて、レバレッジをかけて世界中の株を買ってください」
と言ったわけではありません。
もちろん、金利差を利用した投資そのものが違法なわけではありません。
投資家からすれば合理的なのでしょう。
でも、その取引が巨大になりすぎて、いざ巻き戻ると世界中の市場が揺れる。
しかも2024年には、日本自身が一番大きな株価下落を食らいました。
それを単純に、
「日本が利上げしたから」
で終わらせるのは、なんだか違うんじゃないの?と思ってしまいます。
問題は日本なのか、それとも金融システムなのか
最近、金融の仕組みを少しずつ知るようになって、私が一番不思議に思うのはここです。
なぜ、そこまで借りて投資する必要があるの?
自分のお金で株を買って、上がったら利益、下がったら損。
それなら分かります。
でも、
安く借りられる通貨を世界中から探して、
そのお金を別の通貨に替えて、
さらにレバレッジをかけて、
資産価格が上がっている間は大きく儲ける。
ところが逆回転すると、本人だけではなく世界中の市場まで巻き込む。
これは「日本の金利の問題」というより、
安い資金を探し、借金とレバレッジを使って資産を膨らませ続ける現在の金融システムそのものの問題なんじゃないの?
と思ってしまいます。
金融の世界というのは、知れば知るほど、
「普通に働いて、余ったお金を貯めて投資する」
という私が知っている世界とは、ずいぶん違うところで動いているようです。
そして今、再び円高方向への動きが出て、円キャリートレードの巻き戻しが話題になっています。円キャリーがどこまで積み上がっているかを正確に測ることは難しいものの、BISも、こうしたレバレッジを伴う取引が金融市場の値動きを増幅する点について、政策当局が注意を払う必要があると指摘しています。
さて今回はどうなるのでしょうか。
とりあえず私は、借金もレバレッジもせず、細々と株価を眺めておこうと思います。
下がったら、ちょっと買います(笑)。
「経済ニュースを見て『これどういう意味?』となる人向け」
私も最近、金利・為替・株がどうつながっているのか改めて勉強中。今回の円キャリートレードのような話をもう少し体系的に知りたい方には、こんな入門書も。
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