最近、カリフォルニアでこんな話が出ています。
「資産10億ドル以上のビリオネアに、資産の5%を税金として払ってもらいましょう」
というもの。
これはProposition 40という案で、2026年11月の住民投票で決まる予定です。

毎年ではなく、一回限りのwealth tax(富裕税)だそうです。
2026年1月1日時点でカリフォルニア州に住んでいたビリオネアが対象で、純資産の5%を一度だけ課税するというもの。支払いは2027年で、追加負担をすれば5年間に分けて払うこともできるそうです。ということは、今逃げてももう遅いんですね、
しかも不動産や年金、リタイアメント口座などは基本的に対象外。
税収の90%は、州の公的な医療サービスに使われることになっています。
……なるほど。
毎年5%だったら、私でも「いやいや、それはさすがに」と思います。
だって10億ドル持っている人なら、5%で5,000万ドル。
毎年5,000万ドルずつ取られるのなら、そりゃテキサスでもフロリダでもネバダでも、荷物まとめて行きたくなるでしょう。
でも一回だけか。
すると平民の私はまた、
「いいじゃん、そのくらい。お金持ちなんだから」
と思ってしまうわけです(笑)。
もちろん、当の本人たちにとってはまったく違う話でしょう。
「なんで俺が自分の才能と努力で築いた資産を5%も取られて、お前ら平民に分け与えなくてはいけないんだ」
くらいに思っているのかもしれません。
しかも「たった5%」と言ったって、ビリオネアの5%はとんでもない金額。
資産10億ドルなら5,000万ドル。
100億ドルなら5億ドルです。
……いや、それでも95億ドル残るじゃん。
と、平民の私はまた思ってしまいますけども。
ただし、この税金にはもう一つ興味深い問題があります。
カリフォルニア州の公式分析でも、これによって一部のビリオネアが州外へ移住する可能性があり、その結果、彼らが毎年払っている州所得税が入ってこなくなるため、長期的には州の税収が年間数億ドル以上減る可能性があると予測しています。
つまり、
「超富裕層から一度に数百億ドル規模を集める」
一方で、
「その人たちがカリフォルニアからいなくなって、今後毎年入ってくるはずだった所得税を失う」
という可能性もあるわけです。
なるほど。
そう考えると、
「金持ちなんだから取ればいいじゃん」
だけでは済まない話でもあります。
そして実際、この税金の話を受けて、カリフォルニアを離れる、あるいは離れることを考えるビリオネアが出てくるのではないかと言われています。
カリフォルニアは税金も高い。でも、そのお金はどこへ?
カリフォルニアは所得税も高く、生活費も高いことで有名です。
では、それだけ集めた税金がどこへ行っているのか。
道路、学校、医療、ホームレス対策、公共サービス……いろいろあるのでしょう。
今回のビリオネア税に関していえば、90%は医療サービスに使うと明記されています。
一方、通常の州予算については、州職員の年金や福利厚生などにも相当な金額が使われているんだろうな、と勝手に想像したりもします。
税金を取ることそのものより、
「これだけ払っているのに、暮らしている人が豊かになった実感があまりない」
というところが、カリフォルニアの不思議なところなのかもしれません。
道路には穴があったり、ホームレス問題はなかなか改善しなかったり。
家賃はどんどん高くなる。
ガソリンも高い。
外食も高い。
そして給料がそれに合わせて劇的に上がるわけでもない。
平民よりちょっと下の私はTrader Joe’sの新商品を楽しみに生きる
ビリオネアが、
「税金が高すぎる!カリフォルニアを出ていく!」
と言っている一方で、
平民よりもちょっと下のランクにいる私は、給料が入るとその大半が家賃に消えていきます。
楽しみといえば、無料で見られるYouTubeとTrader Joe’sの新商品。
なんともスケールが違います。
しかもTrader Joe’sの人気商品なんて、
「これ食べてみたい!」
と思って買いに行ったころには、すでに売り切れていたりする。
ビリオネアは税金から逃げるために州を移動し、
私はTrader Joe’sで新商品を探して店内を移動する。
同じカリフォルニアに住んでいるのに、ずいぶん違う人生です。
カリフォルニアを表す名曲『Hotel California』
そんなカリフォルニアという場所を考えるとき、
「なんて言い得て妙なんだ」
と今さらながら感心してしまう曲があります。
イーグルスの名曲、
『Hotel California』。
もちろん歌詞はカリフォルニア州の生活をそのまま説明したものではなく、解釈はいろいろあります。
それでも、華やかで美しく、魅力的なのに、どこか退廃的。
楽園なのか地獄なのか分からない。
ブランド、車、富、見栄、欲望。
そして、一度その世界に入り込んだら、なかなか抜け出せない。
有名な一節、
“This could be Heaven or this could be Hell.”
これなんて、カリフォルニアそのものじゃないですか。
天気はいい。
海はある。
ヤシの木が揺れている。
冬でも比較的暖かい。
一見、楽園。
でも家賃を見た瞬間、
Hell。
好きじゃない。でも離れられない
私はカリフォルニアが大好きなのか、と聞かれたら、実はそうでもありません。
上っ面だけで付き合うような人間関係。
妙に作られた感じのするビーチカルチャー。
見栄っ張りな人たち。
何をするにもお金がかかる。
渋滞。
高い家賃。
好きになれない人も、好きになれないところもたくさんあります。
なのに不思議なもので、長く住んでいると、この場所特有のドライさが妙に心地よくなってしまいました。
人は人。
私は私。
他人が何をしていようが、それほど興味がない。
他人も私にそれほど興味がない。
冷たいといえば冷たい。
でも、それが楽でもある。
深く干渉されない。
何歳になって何をしていようが、それほど気にされない。
どんな格好をしていても、だいたい誰も見ていない。
この距離感に慣れてしまうと、もっと人間関係が濃密な場所では、もう暮らせないような気もします。
ビリオネアは本当に出ていけるのか
そう考えると面白い。
「税金が高いから出ていく!」
と言っているビリオネアたちも、本当に完全にカリフォルニアを捨てられるのでしょうか。
住所はネバダやテキサスやフロリダに移しても、仕事や家や人間関係はカリフォルニアに残っていたりして。
結局また戻ってきたりして。
そして私のような平民も、
「家賃高い!」
「税金高い!」
「人も好きじゃない!」
と文句を言いながら、まだここにいる。
そう考えると、また『Hotel California』を思い出してしまいます。
チェックアウトはできる。
でも――
本当にここを離れられるのか?
ビリオネアから、Trader Joe’sの新商品を楽しみにしている私まで。
案外みんな、この巨大なHotel Californiaの宿泊客なのかもしれません。
